【専門家が徹底解説】スパイラルフリーザーの「構造」解剖。高品質冷凍を実現するメカニズムとは

「スパイラルフリーザー」は、なぜ限られた工場の床面積で、あれほど大量の製品を高品質に急速冷凍できるのでしょうか?


その最大の秘密は、他のどのフリーザーとも一線を画す、独自の「構造」にあります。単にコンベアが螺旋状(スパイラル状)になっている、というだけではありません。高品質な冷凍を実現するため、その内部にはメーカーの技術力が結集した、精密なメカニズムが隠されています。


本記事では、このスパイラルフリーザーの心臓部とも言える内部構造について、専門家が徹底的に解剖します。高品質な冷凍と省スペースを両立する「スパイラルフリーザー」の仕組みを、その詳細な構造を一つひとつ紐解きながら解説します。



スパイラルフリーザーの全体像:4つの主要な構成要素

まず、「スパイラルフリーザー」の全体像を捉えましょう。 この高度な冷凍装置は、主に以下の4つの主要なコンポーネント(構成要素)が組み合わさってできています。


  • 搬送コンベアシステム(製品を運ぶ構造)
  • 駆動システム(コンベアを動かす構造)
  • 冷却システム(冷気を生み出し循環させる構造)
  • 断熱筐体(冷気を閉じ込める構造)


これら4つの構造が一つでも欠けたり、連携が取れていなかったりすれば、「スパイラルフリーザー」は本来の性能を発揮できません。 それでは、スパイラルフリーザーの各構造を詳細に見ていきましょう。



構造①:【心臓部】スパイラルコンベアシステム

「スパイラルフリーザー」の最も特徴的な構造であり、まさにその名の由来となっているのが、螺旋状のコンベアシステムです。


コンベアベルトの種類

「スパイラルフリーザー」で使用されるコンベアベルトは、直線的なコンベアとは異なり、「カーブできる(旋回性がある)」という特殊な構造を持っています。このベルトの選定は、「スパイラルフリーザー」の性能と衛生性を大きく左右します。


ステンレス製メッシュベルト(金網ベルト)

ワイヤーを編み込んだ網目状のベルトです。この構造の最大のメリットは、通気性が抜群であること。製品の下側からも効率的に冷風を当てることができるため、IQF(バラ凍結)や、熱い製品(揚げ物など)の冷却・凍結に適しています。耐久性が高い一方、網目構造ゆえに洗浄性は後述の樹脂ベルトに劣る場合があります。


樹脂製モジュールベルト(プラスチックベルト)

小さな樹脂製の部品(モジュール)をレンガのように組み合わせて作られたベルトです。この構造のメリットは、表面がフラットで洗浄しやすく、衛生的である点です。また、万が一ベルトが破損しても、その部分だけを交換できるためメンテナンス性に優れています。近年の「スパイラルフリーザー」では、衛生意識の高まりから、このタイプが主流になりつつあります。


スパイラルタワー(ケージ)

コンベアベルトを螺旋状に支える骨組みの部分を、「スパイラルタワー」または「ケージ(かご)」と呼びます。この垂直にそびえ立つ塔のような構造こそが、「スパイラルフリーザー」の圧倒的な省スペース性を実現しています。限られた床面積でも、このタワーの高さを調整することで、必要なコンベアの全長(=凍結時間)を確保できるのです。



構造②:【動力源】駆動システム(ドラム式・ダイレクト式)

数トンにも及ぶ製品と、数十メートルから時には数百メートルにもなる長大なコンベアベルトを、マイナス数十度の過酷な環境下で安定して動かし続ける。「スパイラルフリーザー」の駆動システムは、そのための非常に強力な動力源です。 この駆動構造には、主に2つの方式があります。


ドラム駆動方式(センタードラム)

「スパイラルフリーザー」の中央に「ドラム」と呼ばれる巨大な円筒を設置し、そのドラムをモーターで回転させます。ベルトは螺旋状にこのドラムに巻き付いており、ドラムとベルトの摩擦力を利用して、ベルト全体を引っ張り上げる(あるいは押し下げる)のが、伝統的な「スパイラルフリーザー」の構造です。 シンプルな構造で強力な駆動力を得られますが、衛生面では、ドラムとベルトが接触する部分や、巨大なドラム自体の清掃性に注意が必要な構造とも言えます。


ダイレクト駆動方式(ドラムレス)

近年、特に衛生面を重視する「スパイラルフリーザー」で採用が進んでいるのが、この新しい構造です。 中央の巨大なドラムを必要とせず、コンベアベルトの端や、スパイラルタワーのフレーム側で、モーターが直接ベルトを駆動させます。「スパイラルフリーザー」の中心部が空洞になるため、洗浄性が劇的に向上し、空気の流れも設計しやすくなるという大きなメリットがあります。また、ベルトにかかる無駄な張力(テンション)が減るため、ベルトの長寿命化にも貢献する構造です。



構造③:【品質の鍵】冷却システムとエアフロー

「スパイラルフリーザー」が、なぜあれほど急速に製品を凍結できるのか。その秘密は、マイナスの冷気を生み出し、それを製品に吹き付ける「冷却システム」の構造にあります。


冷却器(ユニットクーラー)

庫内の熱を奪い、冷気を生み出す装置です。構造としては、内部に冷媒(アンモニアやCO2、フロンなど)が流れるパイプがあり、そのパイプに「フィン」と呼ばれる無数のアルミ製の薄い板(熱交換器)が取り付けられています。庫内の空気をファンで強制的にこのフィンに通過させることで、空気の熱を奪い、強力な冷気を作り出します。 この冷却器の性能が、「スパイラルフリーザー」の基本的な冷却能力を決定します。


エアフロー(送風)設計

「スパイラルフリーザー」の品質を左右する、最も重要な構造が、このエアフロー設計です。 強力な冷却器(ユニットクーラー)があっても、その冷風が製品に効率よく当たらなければ意味がありません。「スパイラルフリーザー」の庫内に配置された大型の送風ファンが、製品に対して冷風をどのように吹き付けるか、その「風の流れの構造」こそが、メーカーの技術力とノウハウの結晶です。


水平エアフロー

スパイラルタワーの内側から外側へ(またはその逆へ)、水平に冷風を吹き抜ける構造。


垂直エアフロー

タワーの上から下へ(またはその逆へ)、製品に対して垂直に冷風を吹き付ける構造。


製品の形状、密度、熱量に合わせて、最も熱交換効率が高くなるエアフロー構造を設計することで、初めて高品質でムラのない急速冷凍が可能な「スパイラルフリーザー」が完成するのです。



構造④:【効率の維持】断熱筐体(インシュレーションパネル)

「スパイラルフリーザー」が、マイナス30℃やマイナス40℃といった極低温を維持できるのは、外部の熱を完璧に遮断する「断熱筐体(インシュレーションパネル)」という構造のおかげです。


一般的に、ウレタンフォームなどの高性能な断熱材を、ステンレスやカラー鋼板でサンドイッチしたパネル構造になっています。このパネル自体の断熱性能はもちろん重要ですが、それ以上に重要なのが「パネル同士の接合部」の構造です。 接合部にわずかでも隙間があれば、そこから外部の湿った空気が侵入し、結露や霜付きの原因となります。これはエネルギー効率の悪化だけでなく、衛生上の問題にも直結します。 気密性を高めるシール構造や、熱が伝わりにくい「サーマルブレイク構造」などが採用されているかが、「スパイラルフリーザー」のランニングコストと衛生状態を長期にわたって維持するための鍵となります。



まとめ:スパイラルフリーザーの構造理解が、最適な一台を選ぶ鍵


ここまで解説してきたように、「スパイラルフリーザー」は、単なる螺旋状のコンベアではありません。 「コンベア」「駆動」「冷却」「断熱」という4つの複雑な構造が、それぞれ高いレベルで精密に組み合わさって初めて、その圧倒的な省スペース性と高い冷凍性能を発揮する、高度なエンジニアリングの結晶です。


だからこそ、「スパイラルフリーザー」を選ぶ際は、単なる価格やサイズだけで判断してはいけません。自社の製品特性、生産量、衛生基準、そして工場のレイアウトに最も適した「構造」を持つ「スパイラルフリーザー」を提案できる、技術力の高いメーカーを選ぶことが不可欠です。



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