「スパイラルフリーザーは生産性が高いが、そのぶん構造が複雑で、日々の洗浄・殺菌に膨大な時間と人手がかかる…」 「手洗いで清掃しているが、本当に隅々まで洗い切れているか、衛生管理上の不安が残る…」
高性能なスパイラルフリーザーを運用する多くの工場が、このような「洗浄」に関する深刻な課題を抱えています。 手作業による洗浄は、「時間的コスト」や「人件費コスト」の増大だけでなく、作業者の熟練度や体調によって洗浄品質が変動する「品質のムラ」という、企業にとって最も避けたいリスクを常に抱えています。
しかし、ご安心ください。これらの問題を根本から解決する技術、それが自動定置洗浄「CIP洗浄(Clean-In-Place)」です。
本記事では、「CIP洗浄とは何か?」という基本的な知識から、「スパイラルフリーザー」に特化した「CIP洗浄」の仕組み・工程、そして導入がもたらす絶大な経営的メリットまで、専門家の視点で徹底的に解説します。
「CIP洗浄」とは? なぜ「スパイラルフリーザー」に必要なのか

「CIP洗浄とは」、"Clean-In-Place"(定置洗浄)の略称です。 その名の通り、装置を分解することなく、設置したその場所で、あらかじめプログラムされた手順に基づき、洗浄からすすぎ、殺菌までを全自動で行う「CIP洗浄システム」のことを指します。
では、なぜ特にスパイラルフリーザーに、この「CIP洗浄」が必要不可欠なのでしょうか。その理由は、「スパイラルフリーザー」が持つ特有の構造にあります。
1. 構造の複雑さ
長大なコンベアベルト、螺旋状にそびえ立つスパイラルタワー、ベルトを駆動させるドラムやフレームなど、「スパイラルフリーザー」は他の食品機械と比較しても、非常に部品点数が多く、構造が入り組んでいます。これにより、人の手や目では直接確認しにくい「洗浄困難箇所」が構造上、多数発生します。
2. 手洗い(分解洗浄)の限界
もちろん、理想は毎日「スパイラルフリーザー」を完全に分解して洗浄(COP:Clean-Out-of-Place)することですが、その巨大さと複雑さから、現実的には不可能です。日常の洗浄は、どうしても手の届く範囲の手洗いに頼らざるを得ず、衛生レベルの維持に限界がありました。
3. 洗浄品質のバラツキ
手洗い作業は、良くも悪くも「人」に依存します。作業者の熟練度、その日の体調、個人の丁寧さの差によって、どうしても洗浄品質に「ムラ」が発生するリスクが排除できません。
「CIP洗浄」は、この「スパイラルフリーザー」特有の「構造の複雑さ」「手洗いの限界」「品質のムラ」という3つの課題を、すべて同時に解決する唯一の最適解なのです。
「スパイラルフリーザー」におけるCIP洗浄の「仕組み」と「工程」

では、「CIP洗浄システム」は、具体的にどのような「仕組み」で、どのような「工程」を経て「スパイラルフリーザー」を洗浄するのでしょうか。
「CIP洗浄システム」の主な構造(仕組み)
「スパイラルフリーザー」に搭載される「CIP洗浄システム」は、主に以下の3つの構造で構成されています。
1.高圧スプレーノズル群
「CIP洗浄」の核となる部分です。「スパイラルフリーザー」の庫内の隅々、特に汚れが溜まりやすいベルトの裏側、スパイラルタワーの内部、床面などに、計算され尽くした位置と角度で多数の高圧スプレーノズルが配置されます。このノズルから洗浄液やリンス水(湯)を強力に噴射し、物理的・化学的に汚れを剥ぎ取ります。
2.専用ポンプ・配管・タンクユニット
強力な洗浄液を「スパイラルフリーザー」へ送り込み、使用後の洗浄液を回収・循環・貯蔵するための専用ユニットです。洗剤タンク、リンス水タンク、回収タンク、そしてこれらを高圧で循環させる専用ポンプや配管で構成されます。
3.自動制御システム(PLC)
「スパイラルフリーザー」本体の制御盤と連動し、次に説明する「工程」のすべてを全自動で制御する頭脳部分です。「何分間、何℃のお湯で、どの濃度の洗剤を噴射し、何分間すすぐか」といったプログラムを、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)が正確に実行します。
「CIP洗浄」の一般的な「工程」
「スパイラルフリーザー」の「CIP洗浄」は、一般的に以下のステップで自動実行されます。製品の汚れ(油性、水溶性など)によって、工程の順序や使用する洗剤はカスタマイズされます。
1.予備洗浄(水・または温水)
まず、庫内に残った大きな食品カスや表面の汚れを、水または温水で洗い流します。
2.洗剤洗浄(アルカリ・酸など)
タンパク質や脂肪分といった頑固な汚れを、加熱したアルカリ性洗剤などで化学的に分解・除去します。
3.中間すすぎ(水)
使用した洗剤と、浮き上がった汚れを、水(または温水)で完全に洗い流します。
4.殺菌(次亜塩素酸・熱水など)
目に見えない細菌を不活化するため、殺菌剤(次亜塩素酸ナトリウムなど)を噴射するか、高温の熱水(80℃以上)で庫内全体を殺菌処理します。
5.最終すすぎ(水)
使用した殺菌剤を完全に洗い流し、洗浄工程を完了します。(熱水殺菌の場合は不要な場合もあります)
CIP洗浄を「スパイラルフリーザー」に導入する3大メリット(経営的利点)

この「CIP洗浄」を「スパイラルフリーザー」に導入することは、単に「楽になる」というだけでなく、企業経営に直結する3つの大きなメリットをもたらします。
メリット①:圧倒的な生産性向上(時間的コストの削減)
これまで数時間、場合によっては複数人の作業員を拘束していた「スパイラルフリーザー」の洗浄作業が、ボタン一つで自動化されます。 これにより、洗浄時間を大幅に短縮できるだけでなく、工場の稼働が停止している夜間や休憩中などに洗浄を完了させることも可能になります。結果として、「スパイラルフリーザー」本来の生産稼働時間を最大化し、工場全体の生産性を劇的に向上させることができます。
メリット②:人件費の削減と労働環境の改善
洗浄作業にかけていた人件費を、そのまま削減することが可能です。さらに重要なのは、作業員を「洗浄」という付加価値の低い作業から解放し、より付加価値の高い業務(生産管理、品質チェック、新製品の開発補助など)に振り向けることができる点です。 また、強アルカリや強酸といった危険な化学薬品、あるいは高温の湯水に作業者が直接触れるリスクがなくなり、労働安全衛生の向上(労働環境の改善)にも直結します。
メリット③:洗浄品質の標準化(衛生レベルの担保)
これが「CIP洗浄」最大のメリットかもしれません。手洗い作業は、どうしても「人」に依存するため、「洗いムラ」や「すすぎ残し」といったヒューマンエラーの発生をゼロにすることは困難です。 「CIP洗浄」は、プログラムされた通りの「洗浄条件」(時間、温度、濃度)を毎回100%完璧に再現します。これにより、「スパイラルフリーザー」の衛生レベルを常に最高水準で標準化(均一化)することが可能となり、食の安全に対する信頼性を揺るぎないものにします。
CIP洗浄の効果を最大化する「スパイラルフリーザー」本体の「サニタリー設計」

ただし、一つだけ重要な注意点があります。「CIP洗浄システム」は万能ではなく、その効果は、そもそも「スパイラルフリーザー」本体が、洗浄しやすい構造(=サニタリー設計)になっているかに大きく左右されます。
例えば、庫内に水が溜まりやすい「くぼみ」や、汚れが入り込みやすい「隙間(デッドスペース)」が多数ある構造では、いくら「CIP洗浄」で高圧噴射しても、汚れを完全に除去することは困難です。
水はけを考慮した傾斜床やフレーム構造、汚れが溜まらない滑らかな溶接仕上げ、CIP洗浄の効率を前提とした部品配置など、優れた「サニタリー設計」という土台があって初めて、「CIP洗浄システム」はその効果を100%発揮できるのです。「スパイラルフリーザー」選びは、この両輪で見る必要があります。
高岡冷機がご提案する、衛生管理と効率化を両立する「スパイラルフリーザー」

私たち高岡冷機は、「スパイラルフリーザー」の衛生管理の重要性を深く理解し、長年の経験を積んできた専門家集団です。 お客様の製品特性(汚れの質:油性、水溶性など)や、既存の衛生管理基準に合わせた、最適な「CIP洗浄システム」の設計・導入をご提案いたします。
もちろん、その土台となる「スパイラルフリーザー」本体の「サニタリー設計」に関するノウハウも豊富にございます。高岡冷機は、「スパイラルフリーザー」の衛生管理全体を安心してお任せいただけるパートナーです。
「スパイラルフリーザー」の洗浄時間とコスト、見直しませんか? 「スパイラルフリーザー」の衛生管理に関するお悩み、「CIP洗浄」のご相談は、高岡冷機までお気軽にお問い合わせください。

